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7/22 初戦敗退。せつない夏
 
■副題:2人の2年生左腕,背番号10
 
 
  
左から先発の細野くん(2年)、二番手の根本くん(2年)、最後に炎の投球を見せた3年の安本くん

Report 1 7/14 北陵6−12湘南台 @サーティーフォー相模原球場

予期せぬ失点であった。
それは北陵ベンチは言うに及ばず、応援席や一般観客、さらに言うなら湘南台高校ナインや応援席ですらも、だ。

立ち上がり、テンポのよい投球で三者凡退に切って取った2年生左腕、北陵先発・背番号10細野投手がまさかの炎上であった。

彼は昨夏、上級生投手を差し置いて、初戦の先発を担った。
しかも、8回途中まで投げて、勝利投手になっている。

今春けがをして、ようやく戦列に復帰して間もないとは言え、相応の経験値も買われてのマウンドだったはずだ。

そういう経験もある細野くんであるからこそ、本調子でないことを差し引いても、ある程度任せようという松島監督の気持ちもあったろう。
まだ序盤ということもあったろうし、また、二番手投手を誰にするのか、という迷いも生じたことであろう。

いずれにせよ、追いつくには至難の9点を湘南台に与えて、長い2回オモテが終了した。

北陵魂を見せたのはそのあとだった。
二番手の根本くんが粘りの投球を見せ、直後の2回ウラの2点を皮切りに、3〜6回にも1点ずつ返す。
しかも、9回ウラは無死満塁と攻め立てた。

主将の栗原くんの3安打、飯森くんの4安打をはじめ、計16安打放つも、結果は6−12。

管理人は思った。
試合だから、もちろん負けることもある。
しかし、この夏、松島のおっさん(失礼)に一度は勝たせてあげたかった。

12年間取材を続け、公立高校で野球の指導者を続ける辛さも喜びも、多々感じさせてくれた。
今年定年を迎え、場合により最後の指揮になるかもしれない大会だった。

部活ネットの歴史とともに歩んでくれた北陵野球部と松島監督に感謝の意を捧げたい。


  
中)湘南台応援団。ブラス応援は圧巻の音量であった 右)湘南台先発・完投の志村くん
 


 
  
左)先発・星野くん 中)二番手で登場の井口くん 右)両2年生投手をリードした佐々木主将
 
Report 2 7/17 鶴嶺3−4大師 @伊勢原サンシャインスタジアム

1回ウラ先発のマウンドに上がったのは2年生左腕、背番号10の星野くんであった。

そこにはエースである井口くん(2年)が手首の故障で1試合全部を賄いきれないという背景があり、星野くんで行けるところまで行って、後半勝負に持ち込もうという亀山監督の思いもあったろう。

そして、ほぼ監督の思惑通りに試合は運んで行った。

2回オモテ、死球で出た4番川口くんを、5番野崎くんが送り、6番渡辺くんがすかさずセンター前ヒットで先制。
また、追加点には繋がらなかったが、その渡辺くんをさらに7番細野くんが送るという「雨だれ作戦」も敢行された。

鶴嶺ペースである。
3回ウラに3点を失って、予定よりやや早くエース井口くんを投入するも、4回オモテまたしても送りバントと細野くんのタイムリーで1点差に追い上げるあたりは、大師にとってもひじょうに嫌な展開であったはずだ。

主将でもある佐々木くんが、井口くんをうまくリードして大師をゼロに押さえて迎えた最終回。

先頭の渡辺くんがライト線に二塁打で出ると、細野くんが送りバントで一死三塁。
代打中村くんが倒れ、打者は力投の井口くん。

打球はセカンド正面の平凡なゴロ。

「万事休す」

鶴嶺側応援席からは悲鳴が上がる。

ところが、この打球を大師の二塁手・鳴海くんがまさかのファンブル。

それでも落ち着いて拾い直せば十分アウトのタイミングだったが、打者走者井口くんの鬼気迫るヘッドスライディングに気押されたのか、再びこぼしてしまい、セーフに。

一度は死んだ鶴嶺がここで生き返った。

しかし、ここで別の問題が発生した。

ヘッドスライディングの井口くんが足を痛めてしまったのだ。

ピンチ代走を出して、治療に努めたが、もちろん万全の調子というわけにはいかず、そのウラ死球をきっかけにサヨナラ負けを喫することになってしまった。

試合後、泣き崩れた井口くん。
この悔しさを胸に、来夏、リベンジを果たして欲しい。

  
  
左)鶴嶺野球を象徴する送りバント。この試合でも随所に試みられた 中)大師のセカンド鳴海くん。管理人は9回オモテの彼のエラーがチームの敗北に直結しなくてよかったと思っている 右)大師応援席。数こそ少なかったが、盛り上がっていた
  
右)黒田部長は試合後、保護者の前で堪え切れず涙を見せ、チーム・選手への思いを語った


早過ぎる夏休みを迎えた者たちへ
 
この夏、北陵・鶴嶺野球部は残念ながらともに初戦敗退となり、図らずも“早過ぎる夏休み”を迎えてしまった。

その事実は取材させてもらった管理人にとってもたいへん辛いものではあるが、そうしたことを含めて、高校野球は素晴らしいのだと思い直すことにした。

試合後の、監督をはじめとする関係者の口からこぼれる言葉の端々には、1年間練り上げてきたこのチームでもっと戦いたかったという気持ちが散りばめられている。

毎年のように似たことは書いているのだが...。
いつか負ける日は訪れる。
いや、勝ち続けても、引退の日は必ず来るのだ。
その日、複雑な感情は間違いなく各選手の胸に去来し、ある者は涙し、ある者は悔恨の情に苛まれることだろう。

1点の曇りもなく晴れ晴れとした気持ちで引退を迎える選手の方が稀なのである。

しかし、それはけして悲しむべきようなことではなく、むしろ少年が大人へと脱皮を図るのに不可欠な儀式ですらある。

もしかすると、日本の教育を含めたあらゆる制度に於いて、高校の部活というのは、当事者の力量とは関係なく、純粋に戦うことが許される最後の場なのかもしれない。

だからこそ、ある意味ではかなり残酷な終焉とも言えよう。

どれほど努力を重ねても、必ずしも最高の果実を得られるとは限らない、ということを体感しつつ、しかし、最高の果実を掴む者は必ずそれに見合う努力をしているという、ある種の絶望。

それを知ったうえ、それでもこれから野球とは違うフィールドで何らかの努力を継続しようと決意出来るかどうか。

人間を始めてまだ17年とか18年といった若者に、そうした決意を迫るのである。

願わくば、その刃から目を逸らさぬよう。