2012.01.01up
 

11月20日(日)。
晩秋と言うには違和感すら覚える“暑い”日であった。

鶴嶺高校グラウンドでは「茅ヶ崎・寒川地区6校戦」(正式名称を失念致しました)という野球の準公式戦の決勝、鶴嶺vs北陵が行われ、管理人も観戦させてもらった。
試合は、初回、鶴嶺に守備のミスが出たこともあり、北陵が5点をリードする展開となったが、管理人としては、試合の勝敗そのものというより、この時期の実戦で両校がどういった野球を目指そうとしているのかに着目していた。

そして、この5点差というシチュエーションだったからかもしれないのだが、鶴嶺・北陵両チームの野球に、今夏までとはちょっと違うニュアンスを感じた。
今回は鶴嶺高校が会場だったこともあり、試合後、監督就任3期目を迎えた亀山監督にインタビューさせてもらった。

打撃力向上へ!新生鶴嶺野球部
 
この試合を見ていて「おや?」と感じたのは、両校の送りバントに対するアプローチの変化であった。
この夏までの北陵は滅多なことでは送りバントをしないチームであり、やるケースというのは、「打者が左打ちで俊足」または「打者がピッチャーで出塁することのリスク(疲労やケガ)を冒したくない」という場合に限られていた。

ところが、この試合では投手でない右打者が一度ならず送りバントを試みていた。
これはある意味でショッキングなシーンであり、5回裏が終了した時点で北陵の松島監督に訊いてみると、即座に「打てないんです」という答えが返ってきた。
そうした前提から、新チームでは右打者のバントも考慮しているそうだ。

勿論、冬のトレーニングを経て、打撃力が向上すれば、また戦略・戦術も変わるのかもしれないが...

 
かたや鶴嶺は伝統的に、少ないチャンスでも確実にバントでランナーを得点圏に送ることで、ロースコアの接戦に持ち込んで守り勝つという基本戦術であった。
ところが、この試合では初回に5点をリードされていたからか、ついに試合が終わるまで1度も送りバントを仕掛けなかった。
この事実は北陵の変化以上に衝撃的であった。

管理人の亀山監督へのインタビューはこのことを切り口に始まった。

 
鶴嶺高校がこうした戦術・戦法を実行するに当たっては、観る側もいくつか考慮しておくべき点があろう。

一つには、勿論、今がまだ冬期の鍛錬に入る前であるという点だ。
新チームの持つあらゆる可能性を探っておきたい、というのはどの指導者にも存在する気持ちであろう。
ある選手の秘めたる力を開花させるために、勝敗度外視で使い続ける、というのはしばしば採られる策である。

また、一つには、代替わりしたのだから、新チームの持つポテンシャルやスキルに合わせて一旦これまでの戦い方をリセットするということもあろう。

いずれにせよ、鶴嶺野球の方向性にちょっとした変化が生まれたのは間違いない。
そのことについて亀山監督は
「沖縄への修学旅行をきっかけに、ツアー会社社員さんで昨年春夏連覇した興南高校OBに練習方法をいろいろと伺いまして、とにかく緩いボールを引きつけて右方向に打つ、ということを重視するようになりました。これには、近隣で頑張っている北陵さんの影響もあったかと思います。なぜ、監督の松島先生が“打”を重視するのか、ということに対して、私はまだそう感じるだけの経験、つまり強豪私学との真剣勝負で何とか勝ちに行くという経験が足りないので、その真意に届かないところもあったわけです。そうしたこともあって、新チームの様々な可能性を探る意味でも、これまでより“打”に力点を置くようにしました。」

管理人「新チームは監督になられて最初に入って来た子たちが中心メンバーですね。」
亀山監督「そうです。3年間掛けて、何とか勝てるチームにと考え、ようやくそれが実りつつありますね。うちは、練習試合をダブルでやる時は、2試合目は1試合目とほぼメンバー全員を替えるのですが、これまではその2試合目は勝負度外視でほとんど負けていたわけです。ところが、新チームになって、2試合目にも勝つ層の厚さが出てくるようになりました。そんなわけで、今は『練習を頑張ったから出す』とか『3年生だから出す』といった情を前面に出すことなく、『試合に出たければ何か一芸に秀でなさい』ということを言いますし、守りだけでもいい、打つだけでもいい、走るだけでもいいから、何か1つ自分を助ける芸を身につけられる選手を育てたいと思っています。」

管理人「しかし、それでも鶴嶺野球の伝統でもある“守って勝つ”という土台は変わらないものですか?」
亀山監督「ええ。もうそれは鶴嶺だけでなく、トーナメント式の試合を戦おうと思えば、守りから破綻してしまっては厳しいですから。ただ、力勝負をしてもある程度戦えないと、上には行けませんから。要は打つことにも力点を置いて、総合的に強くなってゆこうということですね。」
管理人「長い時間申し訳ありませんでした。では、春以降の鶴嶺の成長ぶりを楽しみにしていますね。」

ちなみに、この日の北陵戦ではキャプテンでチームの要でもあるショートを守る高橋雅樹くんが指の負傷のため欠場。
それにより、ポジションがいくつか動いたこともあって、初回のミスに繋がった。

今後の課題として、そうしたアクシデントに備える意味でも、戦術的なバリエーションを考えていく意味でも、複数のポジションをしっかりとこなせるだけの力をつけておきたいところだ。

春以降の鶴嶺野球にも注目していきたい。
管理人ならびに「部活ネット」では、これからも鶴嶺高校野球部を応援していきます。

 
  
左)鶴嶺の先発・日向くん 中)北陵の先発・池田くん 右)試合後の両チーム首脳陣
  

鶴嶺や北陵の試合を観に行くと、いつも選手の父母以外にもたくさんの観衆がいる。彼らはどこから湧いて出てきたのか(失礼)と思うほどである。ちなみに審判も10人以上集まって、実際のゲームで練習したり、お互いを批評する風景も垣間見られた。こっそり彼らの話も聴いていたが、いろいろとご苦労もおありのようで、いずれ、部活ネットでも取り上げたいと思います。

 
アクシデント勃発
 
7回オモテ、北陵の攻撃中の出来事だ。
バッターがファールチッップしたボールが真後ろに飛んできて、ナント!バックネットを突き破って観客席を直撃した。

幸い観客にけが人などは出なかったのだが、管理人にはかつて、鶴嶺高校での取材中、なるべく迫真の写真を撮ろうとバックネットにへばりついて撮影していた時、ファールチップが膝を直撃したというトラウマがあり(詳しくはこちら)、相当肝を冷やした。

野球部関係者と思しき方がさっと直して下さったのはさすが。
宝くじには当たらないのに、あんな硬いものが当たったら、せつない...