2011.10.09up
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“音を楽しむ”と書いて『音楽』 |
この企画、とてもよかったと思います。 正直に言うと、あまり合同での練習時間もないと推測されていたので、各高校による第一部はともかく、第二部・第三部がどれほどの精度で演奏されるのか、ということにやや不安がありました。 でも...とてもよかったです。 おそらくそれが、会場に居合わせた人たちの代表的な感想かと思います。 この演奏会を開催するに至るまでには関係各位の様々な ご苦労があったと思われます。 参加できた皆さんは、本当にいい経験をしたと、羨ましいほどです。 また、会場にはたくさんの中学生の姿がありました。 彼らに「高校生になったら、自分もあのステージに立ってみたい」と思わせる力があったと思います。 願わくば、来年以降も定着させて頂ければと。 この演奏会には、コンクールや定演とはひと味違う、「音楽を楽しもう」という大らかな雰囲気と、また合同ならではの緊張感があり、その両方を客席でも感じることができました。 音を楽しむには、本能的にただ好きな音を鳴らす、というだけでは勿論足りないのでしょう。 そこに「他者との融合」「美しさの探究」「自らを客観視できる力」といったものが加わって、はじめて“表現”と呼べるものに昇華してゆくのかと思いました。 管理人も予備校講師という職業柄、高校生を毎日見ていますが、彼らがあるきっかけで何かを吸収し始める時の勢いはマネができないものです。 この演奏会の参加者のうち、少なからぬ若者がその“ゾーン”に入ったと予想します。 高いレベルで音を楽しんで下さい。 それは時として人の心に突き刺さり、人の心を動かすものです。 今度はまた別の演奏会で成長した姿を見せて下さい。 楽しみにしていますね。 |
第一部[学校別ステージ] |
※敬称略 |
=茅ヶ崎西浜高校= |
■ファンファーレ for 6[作曲:與儀亭] ■主よ、人の望みの喜びよ[作曲:J.S.バッハ] ■インスタント・コンサート[作曲:H.ワルター] <指揮>残間祐子 |
藤沢清流高校も加わり、写真のように起立演奏(という呼び方でいいのかな?)もあり、視覚的にも楽しい演奏でした。 トップバッターだから、ちょっと緊張していたようにも見えましたが、前顧問の“おちゃめ”渡辺良子先生がホルンで参加するなど、持ち味は出せたステージでした。 |
=寒川高校= |
■青銅の騎士[作曲:R.グリエール/編曲:岡田寛昭] <指揮>岡田寛昭 |
指揮の岡田さんがステージ上に登場すると、緊張感がみなぎり、明らかに変わる空気。 数年前から「空間支配」を標榜し、非日常の世界へ聴く人をいざなう音楽を目指そうとする意識。 ゆっくりと絵を鑑賞するような趣を湛えつつ、スローなところ、弱奏部もしっかり演奏していて、その途切れそうで途切れない音粒は「生命の連鎖」と呼びたくなるほど素晴らしく、ゾクゾクとさせられました。 最終局面では、まだこれだけのダイナミクスを出せるのかと感心するラストスパートで、展覧会が完結するイメージを聴く人に存分に与えたのではないでしょうか。 演奏後の大喝采がそれを物語っているように思います。 管理人は個人的にはこれで寒川高校とその指揮者である岡田寛昭さんが、これまで以上に認知されたのではないかと感じていました。 |
=鶴嶺高校= |
■フィンランディア[作曲:J.シベリウス] ■風紋[作曲:保科 洋] <指揮>堀内昌之 |
1曲目の「フィンランディア」は、大変にしっかりした管楽器の音がドラマティックで、作曲者の意図を掴んでいるように感じられました。 強奏部と弱奏部のコントラストが美しく感じられる演奏でした。 2曲目の「風紋」は、管理人の耳がおかしくなかったとすれば、少なくともこれまで聴いた中では鶴嶺高校史上最高と言ってよい仕上がりだったのではないかと思いました。 夏のコンクールも素晴らしかったですが、さらにスキル・解釈力が向上した印象を抱きました。 出どころ・引きどころを心得た打楽器群に思い切りのよさとキレのよさを感じました。 寒川高校の直後の演奏というのはプレッシャーも掛かるのではないかと思いましたが、音が収縮せず、素晴らしい演奏だったと思います。 これはこの先に大きな期待が持てますね。 |
=茅ヶ崎高校= |
■シーゲート序曲[作曲:J.スウェアリンジェン] <指揮>内川裕子 |
この春、定演の代わりということで行われた5校演奏会(茅ヶ崎・北陵・鶴嶺・寒川の各高校+寒川中学。詳しくはこちら)の時にも、また夏のコンクール(詳しくはこちら)の時にも感じたのですが、茅ヶ崎高校の演奏が“内川テイスト”とも言える「徹底的に丁寧」な色合いになっているなぁ、と。 そのことを内川さん本人に直接尋ねたわけではないのですが、おそらはそういう意識を持って、日頃から取り組まれているのかと想像します。 突拍子もないことはしないかわりに、実にしっかりと地に足の着いた演奏でした。 特に管楽器の柔らかい音出しに背筋が痺れました。 この方向性はとてもよいかと思います。 |
=茅ヶ崎北陵高校= |
■エルサレム讃歌[作曲:A.リード] <指揮>新倉徹也 |
第一部の終了、さらには今年の北陵高校の演奏として、ふさわしい大曲で、そのテイストが存分に発揮された演奏でした。 |
第二部[5高混合バンド] |
JAZZ |
■鬼警部アイアンサイド[作曲:Q.ジョーンズ] ■アメリカン・グラフィティ]X[編曲:岩井直溥] <指揮>堀内昌之 |
J-Pops |
■ディスコキッド[作曲:東海林修] ■サザンオールスターズ・メドレー[編曲:杉本幸一] <指揮>内川裕子 |
Classic |
■スラブ舞曲第1作品集46より第8番[作曲:A.ドヴォルザーク] ■祝宴序曲[作曲:D.ショスタコーヴィチ] <指揮>新倉徹也 |
Original |
■アルメニアンダンス・パートT[作曲:A.リード] <指揮>岡田寛昭 |
第三部[5高合同バンド] |
■エルザの大聖堂への行進[作曲:R.ワーグナー] <指揮>岡田寛昭 |
この演奏会前から、かなり大きな仕掛けをしているという噂は聞いておりました。 実際にステージからこぼれんばかりの人数を見て、真夏の海水浴場を想起せずにはいられませんでした。 「マジで、これで演奏すんの?」という小さな声が、管理人の周囲の席の人たちからも聞こえましたし、管理人もちょっとそう思いました。 しかし、それは杞憂でありました。 第一部・第二部でも大活躍だった寒川高校の岡田さんが、日々パソコンも駆使して編曲していた『エルザの大聖堂への行進』は大団円を迎えるのにあまりに相応しく、茅ヶ崎市民文化会館に響き渡りました。 音楽の持つ包容力が具現化した瞬間だったと言えるでしょう。 指揮を執った岡田さんは「10年後にはこの倍の360人でエルザをやりたいです」と熱く語ってくれました。 |
頑張った大人たちに拍手! |
左から、残間祐子先生(西浜高校)、岡田寛昭さん(寒川高校)、堀内昌之先生(鶴嶺高校) |
左から、内川裕子さん(茅ヶ崎高校)、新倉徹也先生(北陵高校)、司会の中田稔先生(茅ヶ崎高校) 内川さんは指揮の他、「エルザの大聖堂への行進」ではクラリネット奏者としても大活躍。 |
管理人がこの「部活ネット」というサイトを始めて既に9年の歳月が過ぎようとしています。 もともとは、教え子が塾の教室で見せている顔と、自分のアイデンティティを懸けて打ち込んでいる姿のギャップに驚き、学習指導以外でも彼らを応援できたら、という発想で始まったものです。 しかし、子どもたちの部活の状況を追っているうちに、それを支えている真摯な大人たちが大勢いることに気が付きました。 当然と言えば当然のことですが、このサイトではそうした大人たちのことも支援できれば、と願うようになりました。 ここに写真を掲載した皆さんは、それぞれのやり方・それぞれの立場で子どもたちの活動を手伝っている人たちです。 管理人に褒められても嬉しくはないでしょうが、あらためて拍手を送りたいと思います。 また、表立って出て来ない関係者の方々もたくさんいらっしゃることでしょう。 そうした人たちにも拍手を送ります。 素晴らしい演奏会をありがとうございました。 タイトルの通り、まさしく『豊穣なる音の実り』だったと断言します。 |
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会場はほぼ満員。終演後は惜しみない拍手が鳴りやみませんでした |
来年のことを言うのは早いですが...[管理人リクエストタイム] |
来年、この演奏会が実施されるかどうかはわかりませんが、もし開催されるなら、いくつかリクエストしていいっすか? ■リクエスト1:選抜オールスターバンド 演奏会の趣旨と合うのかどうか計りかねるところですが、1曲でいいのでやって欲しいなぁ。 各校のパートリーダークラスの人が集まって激しい自己主張と緊張感ある調和を聴かせてくれたら、嬉しいだろうなぁ。 ■リクエスト2:スーパーアンサンブル これは数チームあるとめちゃめちゃ幸せになれる気がします。 希望を言えば「コントラバス八重奏」「木管八重奏」とかを是非聴いてみたいッス。 時期的に本当のアンコンに近いのが気掛かりですが... ■リクエスト3:アンサンブルチーム「顧問ズ」 余興といったノリでも構わないのですが、いつもは指導する立場の大人が必死に演奏するという図は結構カワイイと想像します。 ま、楽器のバランスは問題になりそうですが。 言えば、いろいろとありますが、このサイトをご覧の皆さんも「こんなことをして欲しい」とおねだりしてみましょう。 何か1つくらい叶うかも... ではまた。 アンコンや定演でお会い出来ることをお祈りします。 それから、会場の内外で声を掛けて下さった方々、ありがとうございました。 細々とでも継続することで、またどこかで再会できるかもしれません。 皆さん、お元気で! |