04年神奈川大会予選組合せ表 ◇茅ヶ崎野球部 ◇西浜野球部 ◇寒川野球部 ◇鶴嶺野球部 ◇北陵野球部
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◆部員数:42名 ◆マネージャー:3名 ◆監督兼部長:秋山英好先生
◆キャプテン:橋本堅二くん ◆現チームの成績:17勝13敗[6月25日現在]
◆これまでの最高成績:ベスト32 ◆昨年の成績:2回戦敗退
◆初戦の日程:7/11(日)瀬谷高校 11:00〜藤沢八部球場

 
2年生主体の若いチーム。伸び伸び野球で勝ち進め!
 
 頂いたメンバー表を見ると、先発メンバーの中に、3年生は3人(ファースト・レフト・ライト)しかいない。残る6つのポジションには2年生が入る。

 3年生が3人しかいないわけではなく、10名いるのに、だ。

 つまり、それだけ2年生パワーが凄まじい、ということであろう。

 ひと昔前なら、レギュラーを外された3年生たちが、2年生を集団でいじめたりするという封建的な体質もあったかもしれないが、勿論、茅高野球部にそういった陰湿さはない。

 これは、今年から監督も兼任される秋山先生の、平等にチャンスを与えて結果を出した者をレギュラーに抜擢する、という「成果主義」(?)によるものなので、3年生たちも納得している、とのことだ。

 一般論であるが、「ここで負けたら引退」という3年生と、「負けても来年があるさ」という2年生では、夏の選手権に臨む心構えやプレッシャーが違う。

 私(管理人)自身の経験からしても、高3の夏はひどく特別なものであったし、これまで取材してきた各校でも、「3年生と1・2年生の気持ちの溝をいかにして埋めるか」ということに、主将や監督が腐心している様が見て取れた。
(ちなみに、私は野球部ではなく、陸上部だったが)
 
 2002年夏、1・2年生だけで甲子園に出場してベスト8まで勝ち進んだ、石川県の遊学館高校を覚えている人も多かろう。私などは、彼らがこのまま優勝したら、マンガの世界をも超越するなぁ、などと楽しんでいたものだ。

 勿論、私学であるし、有力選手を集めたにせよ、水島新司のマンガじゃないんだから、アッサリ優勝というわけにはいかなかったが、当然、翌年(つまり2003年)の夏も甲子園に出てきて、優勝するのでは?と、ちょっぴり思ったりしたわけだ。

 野球という競技の性質上、力があるチームが常に勝つとは限らない、ということは十分理解できるし、そこがまた面白いのだが、1・2年生だけでベスト8にまで進出したチームなら、甲子園に来ることくらいは出来そうなものだ。いや、経験を積んだ上、同じメンバーで1年間鍛えたわけだから、全国優勝も手の届くところだと考えたくもなるものだ。

 ところが、彼らは県予選で敗退を余儀なくされた。

 一面的な見方だということを承知で言えば、2002年には「無欲で」「リラックスして」戦えたが、2003年夏、3年生になって「ここで負けたら終わる」という呪縛にかかっていたのではなかろうか。

 おそらく、力は石川県内では抜けていたはずで、それは春の選抜には出場していたことからも推察される。それでも、やはり負けることもあるのだ。

 ひどく遠回りしたようにも思うが、何が言いたかったのかと言えば、


 今年の茅高は結構リラックスして戦えるんじゃないの?


 ということだ。

 勿論、フィールドで中心になって動く2年生を、ベンチに残る3年生たちがフォローしてこそ、なのであるが。

 若いチームの恐れを知れぬパワーに期待してみようと思う。
(ちなみに、2年生エースの佐野宏明くんは、既に時速133キロをマークする本格派!)
 
  
この日は、どこをどうやって見ても、雨。残念ながら、実戦的な練習は見ることができなかった。
  

「またしても胃の痛い季節です」 by 秋山英好監督
 
 監督業が辛いのは、プロ野球だけではないらしい。

 赴任6年目の秋山英好監督(兼部長)は、接戦に於ける采配の難しさを「胃が痛くなる」という言葉で語ってくれた。

 野球というのは、ゲーム中に「考える時間」がやたらと多いスポーツである。これは、選手がピッチに出てしまえば、ハーフタイム以外にはタイムアウトもなく、監督が一人一人に指示を伝える術のないサッカーやラグビーなどとは好対照だ。

 高校野球の公式戦は、常にトーナメント方式で行われる関係で、「負けないために、監督が様々な状況に応じて考える」ことも、当然多いわけだ。

 バントか強攻策か、ピッチャーは続投か替え時か、ゲッツー狙いか前進守備か。

 ほとんどの時間、考え続ける。こりゃ、確かに大変だ。しかも、勝てば「生徒が頑張りました」と部員を称え、負ければ「監督の采配ミスです」と陳謝しなければならないような風潮もある。

 秋山先生ならずとも、胃が痛くなるファクターは揃っている。

 しかし、それでも顧問を辞めないのは、そうしたものも含めて、野球や生徒が愛しいからに違いない。

 ところで、秋山先生はどこか飄々としている印象がある。それが茅高野球部にも投影されているフシがある。

 例えば、この時期でも、練習は午後6時半には終わる。あとは個人練習に当てられる。
(普通の部活なら、6時半までも、というところだが)

 また、金曜日は翌日に練習試合を控えているので、グラウンド整備と個人練習のみだったりする。

 保護者会には、栄養の本を読んでもらうように指示し、しっかり食事と睡眠を取らせる。

 そういったことは、「野球は技術」という考えに基づいている。
(勿論、精神性を否定しているわけではなく)

 個人個人が努力して、技術を獲得し、十分に栄養を摂取することで体を大きくすることが、結局はチームを強くすることに繋がる、という発想だ。

 だから、茅高野球部は、土曜でも「5時間しか」練習しないそうだ。
(私はこの話を聞いて、腰が抜けそうだった。他校ではもっと練習するらしい...)

 さて、今年の茅高野球部は「5点にこだわる野球」を展開する予定である。理由は至極単純で、5点以上取った試合では勝ち、5点以上失った試合では勝てない、ということがデータとして明白になっているからだ。

 明確な数値でラインを示すことで、生徒たちもその客観性に納得することだろう。勿論、野球というのは、どれほど頑張っても、一度に最大4点(満塁ホームランの場合だけ)しか取れないわけだから、ゲームの中のトータルとして、いかに5点を取るか、ということを部員が考えるわけだ。そして、得点を取るべき場面で、自信を持ってバッターボックスに入れるよう、日頃から何度となくバットを振り込んでいる。

 「今年は冬場も含めて、随分と振り込んだと思いますよ」と言う秋山先生。期待していいですか?

 最後に、選手たちに贈る言葉をお願いした。

 「バランスのよい生き方を志して欲しいが、野球をやるからには、懸命にやって自信をつけてもらいたい。バッターボックスでは一人なので、何かに頼るのではなく、自分のやってきたことが全て。そして、高校時代にレギュラーだったか補欠だったかということは、将来に於いては大した差ではないので、試合には出られない選手も、どれほど茅ヶ崎高校野球部の勝利に想いを馳せられるか、を大事にして欲しい。」

 長時間に亘って、ありがとうございました。
 
  

気は優しくて力持ち。4番キャプテン橋本賢二くん97キロ!
 
 ご覧の通り、素晴らしい体格の持ち主、キャプテンの橋本賢二くん。ポジションはファースト。高野連に提出したメンバー表には、「ちょっとサバをよんで」94キロと提出。たぶん、偽証罪で訴えられることもないから、大丈夫。どうせだから、3ケタに乗せて欲しいくらいだ。

 只今、チームは打撃を中心にした練習を重ねているとのこと。彼のバッティングも見てみたかった...。

Q:キャプテンとして、どういった点に注意していますか?
 

パワー溢れる橋本賢二キャプテン
A:2年生中心のチームなので、その中で3年がどれほど頑張れるか、ということを大事にしています。
Q:去年のチームと較べて、どうですか?
A:バッティングは向上したと思います。あと、シートバント、ベースランニングを多めにやっています。
Q:2年生バッテリーはどうですか?
A:エースの佐野が抑えると、ムードが盛り上がりますから、何とかバッテリーを盛り立てたいです。
Q:この夏の目標を聞かせて下さい。
A:何とか4回戦まで勝ち進みたいです。
(注 4回戦までいくと、第1シードの厚木西高校との対戦が予想される)
Q:とすると、3回は勝たないといけませんが、どうやって勝機を見出しましょうか?
A:バントでしっかり送り、盗塁やエンドランを確実に決めたいですね。とにかく、5点以上取って、5点以内に抑える野球をやれれば、勝利も見えてくると思います。
Q:試合中、心掛けていることはありますか?
A:元気を出して、楽しくやろう、ということですね。エラーをしても、倍の声を出して、次の打席で取り返す、ということを言葉にするようにしています。
Q:目標にしているような選手はいますか?
A:ダイエーの城島選手です。思い切りのよさがいいですね。キャッチャーとして試合をまとめていますし、気合が伝わります。
Q:では最後に、この記事を読む中学生へのメッセージをお願いします。
A:硬球でやる野球は面白いから、是非、高校生になっても続けて欲しいです。特に、ボールをとらえて打つ感覚は軟球と違って、気持ちいいですよ。

 どうもありがとうございました。その打棒でチームを勝利に導いて下さいね。


責任マネの佐々木千恵さん
マネージャーに聞きました
 
 責任マネージャーの佐々木千恵さんは3年生。中学時代はバドミントンをやっていたそうな。

Q:なぜマネージャーになろうと思ったのですか?
A:テレビで甲子園をいつも見ていて、いいなぁと思って、何か関わりたいと思ったのがきっかけです。
Q:マネージャーをやっていて大変だったことはありますか?
A:普段は特にないのですが、試合後に急いで片づけをしなければならないことくらいです。
Q:これは、全マネージャーに聞いていることですが、マネージャーが達成感を得られるのは、どんな時ですか?
A:やっぱり、試合に勝った時ですね。自分が選手として出ていなくても、皆が一つになった時は嬉しいものですよ。
Q:マネージャーをやっていて、よかったと思えることは何ですか?
A:自分が頑張ってやったことに対して、部員が感謝してくれることです。
Q:では、最後に。この夏に向けて、選手たちへのメッセージをお願いします。
A:途中で諦めることだけはしないで欲しい。最後まで、力一杯やって欲しいです。
Q:ありがとうございました。

 彼女は将来、コンサートスタッフや、空間を演出するデザイナーとして、人を支える仕事がしたいとのことです。野球部のマネージャーも立派な演出の仕事ですよ。頑張って下さいね。
 

=2004年度 茅ヶ崎市内各高校野球部顧問の先生方への共通質問=
 
(1)現チームの力を以下の4項目で自己評価(5段階)して下さい。
 ◇投手力:4  ◇守備力:4  ◇打撃力:4  ◇機動力:4

(2)チームとしての課題があるとすればどこでしょうか。
 チャンスの時の打撃。

(3)鍵を握る選手がいれば教えて下さい。特にどういった点で期待しているかも、教えて頂ければ幸いです。
 佐野宏明投手。
 彼が相手打線をどう抑えてくれるかが鍵。


(4)選手権予選での目標を教えて下さい。
 ※「ベスト8」など戦績的なことに加えて、チームとして、是非これだけはやり遂げたいとお考えになっていることでも結構です。
 まず1勝。チームが一つにまとまって戦うこと。

(5)「部訓」(またはそれに相当するもの)があれば、教えて下さい。
 ※先生が大切にされている言葉でも結構です。
 あいさつをしなさい。
 返事をしなさい。
 声をつなげなさい。


(6)これまで高校野球に携わってきて、最も嬉しかったことは何ですか。
 ※高校野球の魅力、ということでも結構です。
 公立校なので、様々な動機を持った生徒が入部してくる。それを、いかにまとめていくのかという事。

(7)野球を通じて、生徒たちに最も伝えたいことは何ですか。
 努力をする事の大切さ。

(8)練習環境等の整った私立高校に対するライバル意識のようなものはありますか。
 特にありません。

(9)先生自身が目標とされている野球人がいらっしゃれば、教えて下さい。特に、その人のどこに惹かれますか。
 ※プロ・アマ、国籍、有名・無名は問いません。
 特にありません。

(10)全国大会はどうしても「甲子園」で行う必要があるとお考えですか。
 回答がありませんでした

(11)勉強との両立で配慮されていることはありますか。
 時間を有効に使うよう、生徒には言っています。

(12)野球をやっている中学生に対して、何かメッセージをお願いします。
 中学時代に野球をやっていても、高校では野球部に入らない子も多い。できれば、真剣に取り組めるようなものがあった方がいい。それが野球でなくてもよいが、高校時代にしかできないことを見つけて欲しい。
回答は監督・部長兼任の秋山英好先生です

 
◆部員数:31名 ◆マネージャー:4名 ◆監督兼部長:黒崎正明先生
◆キャプテン:春木雄士くん ◆現チームの成績:23勝10敗1分[6月24日現在]
◆これまでの最高成績:ベスト32 ◆昨年の成績:1回戦敗退
◆初戦の日程:7/13(火)鶴見工業高校 14:30〜横須賀スタジアム

 
トンビに負けるな。サッカー部に続け!
 
 
 いやいや、笑い事ではないのである。

 左の写真を見てもらえればわかるが、西浜高校グラウンドの支配者は、野球部やサッカー部ではなく、トンビなのである。

 西浜高校では、海に近いという環境ゆえ、グラウンドと校舎の間に防砂林が設けられている。そして、その中のある木にトンビの巣がしっかりと作られているのだ。
 
 部活中に、部員が襲われることもしばしばらしい(マネージャー談)。

 何しろ、我々が取材に行って、最初に注意されたことは「トンビが来ますから、気をつけて下さい」「トンビの来ないところでお話しましょう」というものだったくらいだ。

 超低空飛行も辞さないツワモノのようで、巣に残した子供を守るために必死だ。

 いかんいかん。野球と全く関係のない話になってしまった。

 今年の西浜野球部は2年生エースの水野崇裕くんを中心に、昨年・一昨年より、投攻守に亘ってレベルアップしている模様。したがって、戦術の組み立てもかなりしっかりしたものになってきた。

 やはり、ディフェンスは大事、ということだ。

 いつも隣で練習しているサッカー部がインターハイ予選で県ベスト16にまで進出したことも、大いに刺激になっている。監督兼部長である黒崎正明先生は「サッカー部がベスト16に入ったのは、ディフェンスがよかったからだ」ということを野球部の生徒たちによく話をされるとのこと。

 さあ、守備からリズムを作って、サッカー部に負けないよう、頑張ろう。加えて、トンビにも負けないようにね。
 
  
  
基礎トレーニングとバント処理の練習に大半の時間を費やしていた。この反復が、本番の状況判断を的確なものとする。

27個のアウトをどうやって取るか。それを考えられるチームに!
 
 西浜で11回目の夏を迎える黒崎監督。今年は期待感に溢れている。

 この2年、初戦敗退を余儀なくされた最大の原因であった投手力が、2年生エース・水野くんの成長によって飛躍的に向上したからである。

 「2年生の右ピッチャーでこれだけ投げられる子は久々に見ますよ。」

 と、彼について話す時は心なしか笑顔になっているようだ。

 高校野球は、大学やプロとは違い、トーナメント戦である。だからこそ、これほどの盛り上がりを見せるわけでもあるが、「負けたら終り」という切迫感は、「ミスができない」というプレッシャーともなる。

 そう。野球は「ミスをするスポーツ」の代表なのだ。

 考えてみれば、あのイチローでさえ、打率が4割を超えたことがない。つまり、10回打席に立てば、6〜7回は「ミス」をするという計算になる。

 だから「打撃は水モノ」であり、出塁した走者を確実に次の塁へ進める犠牲バントや、投手をはじめとする守備力が重視される。

 ナンダ、それではつまらんじゃないかね。などと言うものではない。

 実はそのレベルに達するのは大変なわけだ。へっぽこ草野球では、送りバントなんかしない。皆、打ちたいように打つだけである。

 西浜高校野球部は、ミスを出来る限り減らす、という野球を実践できるレベルに至ったということであろう。

 黒崎先生曰く「ミスのほとんどはダイアモンド内で出る」。

 相手の送りバントを無理して二塁に投げることによって生じるフィルダースチョイス(投げてもアウトにできない)などは徹底してゼロにしてゆくことを目指している。

 「まだまだ状況判断が甘いところがあって、外野からの返球をカットするかどうか、といった一瞬の判断力を求められる場面での弱さは、トーナメントでは命取りになりかねませんから」とも。

 これは、新人戦や春季大会で、大清水・県鎌倉といったチームに1−2で競り負けた、という経験が吐かせた言葉でもあろう。当然、投手力・守備力を整備して、今度は勝ちたい。

 初戦の相手は鶴見工業。別段、相手に合わせた作戦などはなく、自分たちの野球で向かうとのことだ。その西浜らしい野球というのが一体何であるのかも聞いた。

 「野球は最終的に3つずつアウトをとるのを9回繰り返す、という競技です。つまり、トータル27個のアウトをどうやって取るか、ということを前半・中盤・終盤の3つに分けて、ピッチャーを中心に考える、ということですね。幸い、今年は水野の他にも、春木・山田・小野といった二番手投手陣も揃っていますから、ディフェンス面は計算できますね。」

 どうやら期待してよさそうな雰囲気になってきましたぞ。

 さて、黒崎先生には1つのポリシーがある。それは「3年生は骨折していてもベンチ入りさせる」という方針だ。
(3年生部員が20名以下の場合、という意味だとは思います)

 幸いにして、骨折している部員はいないし、今年は3年生9名が全員ベンチ入りできる。ベンチ入りが叶わない2年生に対しては、1人ずつ呼んで、その理由を話す。その後、全部員の前でベンチ入りメンバーを発表すると、外れた部員から応援団長役を買って出てくれる子が必ずいるそうだ。

 それが西浜野球部の伝統であり、応援することで全部員が一つになれると同時に、その応援の力で、フィールドに立つ選手達がどれほど勇気づけられるか、上級生であるほど理解している。

 訪問させてもらった日、部員数が31名という割に、参加者が20名ほどだった理由がやったわかった。ベンチに入らない部員たちは、別の場所で応援練習をしていたのであった。
 
  

キャプテンに聞きました

キャプテンの春木雄二くん
 
 昨年のキャプテン鶴嶋くんは研究熱心なキャッチャーであったが、今年のキャプテン春木雄二くんはファースト兼リリーフ投手。ポジションの違いで、特に試合中の言動にも違いが出るのか、興味深いところだ。

Q:キャプテンとして気を遣っている点は何ですか?
A:とにかく声を出して盛り上げることです。あと、言い辛いことでも、言うべきことは言う、ということですね。
(確かに、彼はランニングや準備運動の際、先頭になって大声を出していた)
Q:試合中はどうですか?
A:エラーした選手には、とにかく「明るくいこう」と声を掛けます。暗くなっていてもダメですし。
Q:この夏の目標はどのあたりに置いていますか?
A:4回戦まで勝ちあがって、武相高校(第3シード)とやりたいです。
Q:そのためには初戦を突破することが条件になりますが、鶴見工業戦については?
A:部員が多く、応援のスケールも大きいので、それに負けないで自分たちの野球をしたいですね。とにかく、声を出していいムードにしようと思っています。
Q:現在のチームをキャブテンの目から見るとどうですか?
A:投手力は、僕のリリーフが要らないほど、水野が精神的にも成長しましたから、制球難で崩れることもなくなりました。二番手の小野・山田も経験値が高いので心配はしていないです。打撃も4・5番は長打もありますし、つなげられる打線だと思います。問題は守備で、初回の失点が多いことですね。特に、ツーアウト後に油断して取られることがあったので、気をつけたいです。
Q:西浜高校野球部の特徴をアピールして下さい。
A:楽しく。そして、勝ちたいですね。
Q:ありがとうございました。
 


責任マネの山田継美さん
マネージャー「兄に憧れて...」
 
 責任マネージャーの山田継美(つぐみ)さんは3年生。我々に「トンビ」のことで注意してくれた人である。

Q:なぜ野球部のマネージャーに?
A:中学時代はテニス部だったのですが、実は3つ上の兄が、西浜の野球部にいまして、夏の大会にピッチャーとして投げているのを見て、カッコイイなぁと。その時のマネージャーさんとも仲良くなって、自然になっていましたね。
Q:現在の西浜野球部についてはどう感じていますか?
A:上下関係がしっかりある中で、仲良くやっているのがいいですね。点を取られると凹むところがありましたが、今は粘りも出てきたと思います。今の3年生には1・2年の頃から試合に出ている選手も多いので、経験もありますし、戦力的には昨年より上かなぁと思っています。
Q:キャプテンの春木くんんについては?
A:皆、自己主張が強い(笑)中で、よくまとめていると思います。
Q:マネージャーとしての達成感というのは、どういったところで得られましょうか?
A:そうですねぇ、やっぱり、出来る限りのサポートをして、選手達が試合に勝った時ですね。
Q:さて、最後の夏の大会が近づいてきましたが、選手たちにどう戦ってもらいたいですか?
A:負けていると声が出なくなるので、踏ん張りどころで頑張って、100%の力を出して欲しいです。あと、ミスした時に感情をオモテに出さず、連鎖的なミスを防いでもらいたいですね。「ドンマイ」の精神が大事だと思います。
Q:ありがとうございました。

 将来は児童(特に障害児)福祉の方面に進みたいとのこと。寒川高校の庄司さんも福祉(介護)への道を歩むということだし、やはり、マネージャーを進んでやろうとする人というのは、「人の役に立ちたい」という希望を持っているのであろう。

 山田さん。険しい道だけれど、頑張って下さい。勿論、野球もね。
 

=2004年度 茅ヶ崎市内各高校野球部顧問の先生方への共通質問=
 
(1)現チームの力を以下の4項目で自己評価(5段階)して下さい。
 ◇投手力:4  ◇守備力:4  ◇打撃力:4  ◇機動力:3

(2)チームとしての課題があるとすればどこでしょうか。
 競り合いに強くなる。

(3)鍵を握る選手がいれば教えて下さい。特にどういった点で期待しているかも、教えて頂ければ幸いです。
 投手の水野。
 過去2年、初戦で負けたということもあり、今年は特に投手の整備を重点的にやってきたので、期待しています。


(4)選手権予選での目標を教えて下さい。
 ※「ベスト8」など戦績的なことに加えて、チームとして、是非これだけはやり遂げたいとお考えになっていることでも結構です。
 ベスト16。まずは初戦突破。

(5)「部訓」(またはそれに相当するもの)があれば、教えて下さい。
 ※先生が大切にされている言葉でも結構です。
 1.元気よく挨拶すること(礼儀を正しくしよう)
 2.努力すること(自分の限界に挑戦してみよう)
 3.マナーを守ること(高校生として、他の模範となろう)
 4.感謝すること(自分を助けてくれる人へ感謝しよう)


(6)これまで高校野球に携わってきて、最も嬉しかったことは何ですか。
 ※高校野球の魅力、ということでも結構です。
 選手がヒットを打ったりした時の満面の笑みを見たとき。

(7)野球を通じて、生徒たちに最も伝えたいことは何ですか。
 社会人として通用する、人間としての実力をつけて欲しい。

(8)練習環境等の整った私立高校に対するライバル意識のようなものはありますか。
 打倒私学の意識はありますが、そこまでのレベルではないと思います。

(9)先生自身が目標とされている野球人がいらっしゃれば、教えて下さい。特に、その人のどこに惹かれますか。
 ※プロ・アマ、国籍、有名・無名は問いません。
 特にいません。

(10)全国大会はどうしても「甲子園」で行う必要があるとお考えですか。
 やっぱり「甲子園」だと思います。

(11)勉強との両立で配慮されていることはありますか。
 成績が不振だった生徒には、勉強をさせてから練習に出させることもあります。

(12)野球をやっている中学生に対して、何かメッセージをお願いします。
 高校野球は素晴らしいステージです。是非やってみて下さい!
回答は監督・部長兼任の黒崎正明先生です

 
◆部員数:19名 ◆マネージャー:2名 ◆監督:村岡信さん ◆部長:伊東正先生
◆キャプテン:箱崎広大くん ◆現チームの成績:5勝8敗[6月23日現在]
◆これまでの最高成績:ベスト32 ◆昨年の成績:1回戦敗退
◆初戦の日程:7/15(木)横浜学園高校と慶応藤沢高校の勝者 14:30〜小田原球場

何とかならないのか?女子選手のベンチ入り
 
 寒川高校野球部は、現在、部員数19名。
 
 やや少ない、とも思えるが、これだけいれば、十分に戦える、とも言える。
(但し、3年生が抜けたあとは、12名となるため、やや厳しい状況にはなるが)
 
 さて、この「部員数19名」という数字は、寒川高校野球部の取材に来た私(管理人)にとって、ひどく微妙なものに思えて仕方がなかった。

 ご存知かもしれないが、夏の選手権予選では、各高校とも、ベンチには選手20名とマネージャー1名が入れる規定となっている。

 これを聞いて、「なんだ、じゃ、寒川高校は全員ベンチに入れるからよかったじゃん」などと言ってはイケナイ。

 実は20人目の「登録されざる部員」が、寒高野球部には存在しているのだ。

 『彼女』の名は伊藤佳穂。この春入学してきた1年生である。

 何かと規則にうるさい高野連のホームページで一応確認すると、「参加資格者」という項目があり、その中には次なる条文がしっかりと盛り込まれている。

第4条 参加選手の資格は、以下の各項に適合するものとする。
 (1)その学校に在学する男子生徒で、当該都道府県高等学校野球連盟に登録されている部員のうち、学校長が身体、学業及び人物について選手として適当と認めたもの。

(以下省略)
 
 つまり、彼女は、どれほど厳しい練習に耐えようとも、公式戦への出場は叶わないのである。

 これって、ちょっと理不尽なような気がする。

 今は女の子も硬式野球をする時代だ。何せ、女子硬式野球の世界大会が開催され(今年で4回目)、日本代表は昨年優勝しているほどだ。ちなみに、ゼネラルマネージャーは日本人メジャー第一号の村上雅則氏、監督は元日本ハムの広瀬哲朗氏、コーチには元中日の与田剛氏など錚々たるメンバーが参画している。

 代表選手は中学生から20代後半まで様々。高校生で代表になっているのは、大概、「硬式野球部」を持っている学校に在籍する生徒である。

 つまり、女子硬式野球部が存在している、ということだ!ちなみに、女子高校野球の全国大会も春・夏と開催されている。

 この事実を以ってしても、「女の子には野球はムリ」という考えは、少なくとも通用しない。

 「平塚ろう学校和太鼓“鼓舞子”」のところにも書いたが、かつては聴力障害者(実際には、ろう学校在籍者)も硬式野球からは排除された存在であった。

 しかし、度重なる陳情と、何よりもろう学校の生徒と先生の熱い想いが、規則を変更させた、という経緯がある。
(詳しくは、『遥かなる甲子園』(原作・戸部良也氏、マンガ・山本おさむ氏)をお読み下され)

 また、ちょっと前の話であるが、東京六大学で明治大学と東大が公式戦でお互いに女子投手を登板させたこともあった。

 きちんと毎日練習に出て、男子部員と同じメニューをこなしている伊藤佳穂さんが、ベンチに入ることもできない、というのは、どうにも納得しがたいものがある。

 だいたい「学校長が身体、学業及び人物について選手として適当と認めたもの」というくだりも、極めて曖昧である。成績がどれほど優秀な選手だったらいいのか、また、「人物」の評価などどうやってするのか、といった疑問は次々に噴出する。

 なぜ「男子生徒」というところだけが明確になっているのか、いずれ筋を通して聞くつもりである。

 練習試合では相手校の許可を得て、出場できる機会を作りたい、と伊東部長も話されている。しかし、練習試合は、あくまで練習試合なのである。彼女も「何とか規則を変えてもらいたい」と願っている。

 『部活.ネット』では、その願いを何とか高野連に届けたいと思う。
 
  
中学時代はソフトボール部に在籍。親御さんにも反対されていたが、今は「野球をやるのがとても楽しい」と言っている伊藤佳穂さん。キャッチング、スローイングともに様になっている。しかし、このままでは3年間頑張っても、ベンチには入れない。めげずに頑張って欲しいものである。

  
  
この日は前キャプテンの椎野くんをはじめ、OBが4人来て、練習を手伝っていた。メニューはずばり「ノック」。守備を固めて、目標の初戦突破を!

伊東部長「何とかクロスゲームに」
 
 昨年、やはり部長の伊東正先生に「現チームの戦績を教えて下さい」と質問したら、

 「秘密、ということにしておいて下さい」

 という、答えが返ってきたことを思い出す。

 かなり厳しい成績だったことは想像に難くない。しかし、今年は練習試合で4連勝したということもあって、最低限度の基本はできるようになった、とのこと。

 これは2年生投手・永山進吾くんの進境著しいところに根拠がある。

 球威・制球力ともに向上し、四球も1試合2個以内という安定感が、ゲームを作る最大の要因となっている。問題は内野陣の守備。先日の湘南学園との練習試合でも、内野の連鎖的エラーから大量失点をしてしまうという悪い癖が出てしまった。

 したがって、現在は内野陣のエラーが連鎖しないための練習メニューを多く取り入れている。

 初戦の相手は、横浜学園と慶応藤沢の勝者。この試合での勝機を伺ってみた。

 「とにかく、内野がエラーをしないことですね。そうすれば、ピッチャーから大崩れすることはありませんから、接戦になると思います。そうしたら面白いのではないかと。」

 何か秘密兵器はありますか?

 「ライトに入る鈴木謙吾ですかね。彼は中学時代はサッカーのゴールキーバーをやっていたのですが、ここのところ伸びてきて、よく打つようになりましたよ。」

 今年のチームは、公式戦未勝利。また、過去2年は初戦敗退。何とか、この夏、1勝したい。
 
  
昨年のチームより自信はありますよ、と語る伊東部長。何としてもクロスゲームに持ち込んで、1勝を狙う。


キャプテンの箱崎広大くん
キャプテンにインタビュー
 
 キャプテンはセカンドを守る箱崎広大くん。右投げ左打ち。162センチというサイズのなさを俊敏な動きでカバーする。

Q:キャプテンとして、心掛けていることは何ですか?
A:口より行動、積極的な声掛けです。
Q:何か信条のようなものはありますか?
A:やる時にはしっかりやる。グラウンドではきびきびと、ということです。
Q:試合中、気をつけていることは?
A:チーム一丸、ということですね。練習でできることは試合でもできる、と言っています。
Q:現チームの課題を挙げるとすればどういった点ですか?
A:とにかく守備ですね。ミスから相手にビッグイニングを与えることがあるので、そうならないよう、守備の強化を図っています。
Q:よい点は?
A:乗れる状況になると、すごく乗ります。そういう状況を作り出せるといいのですが。
Q:エースの永山くんについては?
A:コントロールよく、三振も取れて、安定していますね。
Q:最後にこの夏の目標を聞かせて下さい。
A:とにかく1勝したいです。相手は細かな野球をしてくると思いますので、頭を使って、一歩先を読むプレーで対応したいです。
Q:ありがとうございました。
 

エースにインタビュー

エースは2年生の永山進吾くん
 
 部長からも、キャプテンからも信頼の厚い2年生エース・永山進吾くん。彼の投球に寒高野球部の命運が懸かっている、と言っても過言ではあるまい。

Q:スピードもかなり出てきたと聞きましたが、どのくらいですか?
A:いやぁ、実は、スピードガンがないので詳しくはわからないんです。
(そ、そうか...。来年までに買えるといいね)
Q:君のセールスポイントはどこになりますか?
A:アウトコースのストレートは低めに決める自信があります。
Q:では、逆に今の課題は?
A:インコースのストレートがどうしても投げづらい、ということです。
Q:それはまたなぜ?
A:何か、当てて(打者に)しまうんじゃないかと、怖い気持ちがあります。でも、それを克服しないといけませんね。あと、余計なフォアボールは極力出さないようにしたいです。
Q:球種には何がありますか?
A:カーブとスライダーです。
Q:この夏、最も気をつけたいところは?
A:マウンドで緊張しないことです。
Q:ありがとうございました。リラックスして、いつもの投球を心掛けて下さいね。
 



3年生になった庄司愛花マネ
1年ぶりです。元気でしたか?マネージャー
 
 責任マネージャーの庄司愛花さんは3年生。昨年、取材させてもらった時も、対応してくれたのが彼女でした。

 その時に「あぁ、この子は心底野球が好きでやっているなぁ。」と感心したものだった。1年ぶりに再会できて、とても嬉しい気持ちであった。

Q:どうですか、今年のチームは?
A:去年より皆がきちんと練習に励むようになってよかったです。でも、夏の大会が近いのに、練習中におしゃべりしているような時もあって、そのあたりはまだ注意が必要だと思います。
Q:ところで、去年は聞きそびれてしまったけど、なぜまた野球部のマネージャーをやろうと思ったの?
A:以前の顧問の先生に誘われて、その時の先輩たちと一緒にやったことが楽しくて、居ついてしまいました。
Q:そうでしたか。でも、それだけでは3年間やってくることは難しかったのではないですか?
A:やっているうちに、選手が個人個人でフォームが違ったりしていて、野球の面白さに惹かれるようになりました。選手への面倒見も楽しいですよ。一生懸命やっている姿を見ると母性本能がくすぐられるような気がします。
Q:プレーヤーではないから、達成感を得るのが難しいようにも思いますが、その辺はどうなのでしょう?
A:皆が成長してゆく姿を見るのは嬉しいものですよ。それに、自分がしたことに対して、感謝の言葉をもらえると、それが支えになります。
Q:今年は1年生にプレーヤーの女の子がいるようですが、彼女を見ていてどう感じますか?
A:羨ましいなぁと。ただ、自分には体力的にも技術的にも無理ですから、尊敬してしまいますね。
Q:さて、夏の大会に向けて、マネージャーとして、どんなことをして、どんなことを願っていますか?
A:今年はベンチに入ることができるので、「1番の応援者」としてみなの力になりたいです。是非、1勝したいですね。
Q:どうもありがとうございました。また球場で会えるといいね。

 将来は介護福祉の道へと進みたい、と言っている彼女。大変な仕事ではあるが、「誰かのためになりたい」という気持ちがひじょうに強く、きっと道を開いてゆくに違いない。頑張ってね。

=2004年度 茅ヶ崎市内各高校野球部顧問の先生方への共通質問=
 
(1)現チームの力を以下の4項目で自己評価(5段階)して下さい。
 ◇投手力:4  ◇守備力:3  ◇打撃力:4  ◇機動力:3

(2)チームとしての課題があるとすればどこでしょうか。
 守備力。内野が連鎖的に失策することが大問題。

(3)鍵を握る選手がいれば教えて下さい。特にどういった点で期待しているかも、教えて頂ければ幸いです。
 2年永山進吾くん
 投手であり、中心打者だから。


(4)選手権予選での目標を教えて下さい。
 ※「ベスト8」など戦績的なことに加えて、チームとして、是非これだけはやり遂げたいとお考えになっていることでも結構です。
 初戦を勝ち抜くこと。

(5)「部訓」(またはそれに相当するもの)があれば、教えて下さい。
 ※先生が大切にされている言葉でも結構です。
 大胆かつ繊細に

(6)これまで高校野球に携わってきて、最も嬉しかったことは何ですか。
 ※高校野球の魅力、ということでも結構です。
 現在、40歳代の後半という年齢にになっていますが、(教え子たちと)我が家で一緒に飲めること。

(7)野球を通じて、生徒たちに最も伝えたいことは何ですか。
 ふところの深い人間になって欲しい。

(8)練習環境等の整った私立高校に対するライバル意識のようなものはありますか。
 以前はありました。

(9)先生自身が目標とされている野球人がいらっしゃれば、教えて下さい。特に、その人のどこに惹かれますか。
 ※プロ・アマ、国籍、有名・無名は問いません。
 原貢さん(前巨人監督・原辰徳氏の父君)

(10)全国大会はどうしても「甲子園」で行う必要があるとお考えですか。
 はい。

(11)勉強との両立で配慮されていることはありますか。
 特になし。

(12)野球をやっている中学生に対して、何かメッセージをお願いします。
 野球に限らず、スポーツは楽しくやるもの。
回答は部長の伊東先生です

 
◆部員数:27名 ◆マネージャー:2名 ◆監督:菊地原孝祐先生 ◆部長:加藤裕志先生
◆キャプテン:里村太河くん ◆現チームの成績:35勝17敗4分[6月19日現在]
◆これまでの最高成績:ベスト16 ◆昨年の成績:3回戦敗退
◆初戦の日程:7/14(水)瀬谷西高校と湯河原高校の勝者 12:00〜県立相模原球場

 
シードはダテじゃない。さらなる未踏の壁を登れ!
 
 鶴嶺高校野球部は、この夏「第3シード」である。

 シードというのは、元来「種」(seed)のことであり、転じて「スポーツなどのトーナメントで強豪どうしが序盤に当たらないように、よい種を分けて植える」という意味になった。

 第3シードとは、春季大会でベスト16に残った証でもあるわけだ。
(ちなみに、ベスト8のチームが第2シード、ベスト4のチームが第1シードとなる。詳しい組合せはこちらを)

 昨年は、2回戦(対立花学園)で劣勢の終盤、相手キャッチャーがファウルフライを落とした直後、現エースの青木悟志くんがホームランをかっ飛ばしたのをこの目で目撃した。

 そういう勝負強さ、粘りのあるチームで、しかも昨年の先発メンバーが4人残っている。期待するな、と言う方がムリである。

 しかし、我々が訪ねた日の練習は地味そのものであった。

 ランニング、キャッチボールといったルーティンワークのあとは、ひたすら「投内連携」(ランナーがいて、内野にバントが転がるという状況設定で、投手・内野手がどう動くかという確認)に終始している。

 どこにボールが転がるかは、コーチがその場で決めている。
(たぶん、いろいろなことをイメージしながら、ね)

 ランナー役は大変だ。塁間の27.34メートルを何度も走らなければならない。少しでも気持ちが緩んでいると、菊地原監督からすぐお呼び出しが掛かる。

 実際に数回「お呼び出し」が掛かった。私(管理人)には「気の緩み」とは感じられないものであったが、監督は即時マウンド付近に全選手を集めて、何が悪かったのかを具体的に指摘する。

 そう。彼らは球遊びをしているわけではないのだ。強豪が集う神奈川県で、これまでの最高成績であるベスト16を超えようとしているのである。野球という競技は、その特性上、『蟻が象を倒す』こともあるスポーツだ。だから、小さな綻びの存在も許さない、という努力を継続している。

 「プロじゃないんだから、しょうがないじゃん」などとは誰も口にしない。厳しさは夏の日差しをも凍らせる。彼らが声を出している時と、静まり返っている時のギャップは相当なものがある。

 安易に「頑張って」などとは言えない雰囲気だ。
(いやいや、練習が終わってしまえば、皆、気のいい高校生たちなんだが)

 挨拶も素晴らしい。我々のような素人が訪ねて行っても嫌な顔ひとつ見せないし、気持ちよく、元気よく声を掛けてくれる。こちらも釣られて元気な声が出ます。

 鶴高野球部を取り巻く、いろいろな人たちの話を聞いてきましたぞ。
 
  
果てしなく続く投内連携。これだけやっても、まだ本番ではミスも出る。基本の反復こそが大事だ。

菊地原監督「13年分の想いを込めて戦います」
 
 監督である菊地原孝祐先生は、鶴嶺高校野球部で指揮を執って13年目。同じ平成4年に赴任された北陵の前監督・鶴岡先生が今春、転任され、市内では最長期間同一校の顧問を続けられている計算になる。

 その間、鶴嶺野球部に何人の部員が在籍したことであろうか。大活躍した子もいれば、ベンチに入れなかった子もいたはずである。

 この夏、菊地原先生は、そうした13年間の想いを込めて、選手権予選に臨む。

 実は、昨夏、菊地原先生は娘さんのご病気で、陣頭指揮を振るえない時期があった。そのことが生徒たちに申し訳ない、という気持ちが強い。

 しかし、自分が不在だったことが現在の部員たちの成長を促し、野球をする中で、精神的な自立もできるようになったことは嬉しい、と語っている。

 これは1年・2年といった短いスパンではなく、13年間蓄積してきたチーム力の為せる業であり、私が見る限り、鶴高野球部は「まず菊地原ありき」だということは間違いない。

 今年のチームは春季大会で県ベスト16に入るという好成績を残した。しかも、湘南地区大会初戦から、県大会3回戦(県大会は2回戦から登場)までの4試合を連続完封、さらに、うち3試合は2ケタ得点でコールドゲームだ。

 チームとしての地力も間違いなくついているが、ベスト8を懸けた横浜商大戦では2−11で破れた。

 2000年夏、第一シードを打ち倒してベスト16入りして以来、どうしても超えられないのがベスト8の壁である。

 菊地原先生曰く、「横浜商大などの私立強豪校は、ベスト8以降のことを初めから考えて備えてくるのに対して、鶴嶺などの公立高校は、そこに行き着くので精一杯。野球という競技の特性上、一度なら強豪校を破ることもできるが、神奈川の代表になるためには3〜4校、強い学校に勝たねばならない。そこがトーナメントの難しさですね。」

 では、順調に勝ち進めば5回戦(またしてもベスト8決めの試合だ!)で当たることが考えられる横浜商大に勝つにはどうしたらよいのだろうか。単刀直入に尋ねてみた。

 「個々のレベルアップに尽きると言えるでしょうね。」

 勿論、個人個人の打撃・守備といったことも、この中には含まれるが、あくまで野球はチームで戦うものであり、戦況に応じた判断力や確実に走者を進めるスキルがなければ、到底勝てない。そのことを「個々のレベルアップ」という表現を使って話をされたのであろう。

 鶴嶺野球部監督としての集大成を懸け、13年分の想いと、さらに今年創立30周年を迎えた母校の在校生・OBたちの想いも込めて、大会に臨む菊地原先生。

 『部活.ネット』では鶴嶺高校野球部を大いに応援したいと思います。
 
  
私と話す時の柔和さと、グラウンドで部員を叱咤する時の厳しさはあまりに鮮やかなコントラストである。部長の加藤先生曰く、「彼は“飴とムチ”の使い分けが天才的にうまい」。
 

〜こぼれ話〜
 
 取材に対応する菊地原先生の語り口調はひじょうに柔らかい。そして、言葉も慎重に選ばれているのがわかる。昨年、電話で初めてお話させてもらった時、失礼ながら、「エッ?これがかねがね噂の菊地原先生かい?」と驚いたものだ。
(さすがに今年は驚きませんでしたよ)
 
 しかし、部員のプレーに気持ちが入っていないと見るや、鋭い怒声にもなる。それが単なる精神論ではなく、具体性を伴っているので、部員たちはきちんと聞き入る。

 まさしく「飴とムチ」か。

 去年、菊地原先生との直接取材ができなかったこともあり、今回の取材は長時間、野球に限らず、様々な話題に花が咲いた。記事としては書けないことも多いが、「高校野球の全国大会はどうしても甲子園か?」という話は盛り上がった。

 菊地原先生は「単に“聖地”ということだけでなく、出場した監督は、グラウンド自体がとてもよい、と言いますね。土もまるでじゅうたんのようだそうです。」と思いを馳せていたのが印象に残る。

 さらに、「鶴嶺高校のグラウンドが舞台裏、勝ち進めば舞台のグレードも高くなって、それだけ準備してくれる人も多くなってゆく。そういう喜びもありますし、生徒たちには、そのことに感謝の気持ちを忘れずにいて欲しいですね。」とも。

 また、ゆっくりお話できることを楽しみにしていますね。

加藤部長に聞きました
 
 加藤裕志部長は国語の先生。昨年、菊地原監督が不在の際には采配も振るった。

 加藤先生は鶴嶺高校第三期生で、野球部では菊地原監督の1年先輩であった。今、再び、母校で巡り合った二人が、鶴嶺野球部を春季大会で県ベスト16へと導いたのである。
 
 昨年は池田俊くん(現在、中央大学野球部)という「七割バッター」がキャプテン・センター(1番打者)にいて、私は彼の打棒に舌を巻いたものであった。 加藤先生から見た、今年の鶴嶺野球部の印象を伺った。

Q:今年のチームの特徴はどういったところになりますか?
A:エースの青木に安定感があり、キャプテンで捕手の里村の統率力もあって、センターラインがしっかりしていますね。

Q:里村くんのキャプテンシーということについてはいかがですか?
A:実は、新チームになって最初のうちは「日替わりキャプテン」のようなことをしていました。それくらい3年生の中にはキャプテンが務まる適任者も多かったわけですが、その中で選ばれたわけですから、昨年の池田よりも、そういった意味では統率力はあるかもしれませんね。

Q:昨年は、ここぞと言う時に「人のよさ」が出てしまうと仰っていましたが、そのあたりは改善されましたか?
A:人のよさは相変らずですが、エラーが出ても引きずらない、勝負強さが出てきました。特に一人一人の自覚というのが強く、練習に独自の工夫をしているのがいいですね。やはり、昨年秋の大会で延長再試合といった緊張感の中で、戦ったことなどは精神的にも大きいと思います。

Q:現在は主にどういったことを目標に練習されていますか?
A:弱点補強、ということで守備力向上を目指しています。

Q:打線についてはいかがですか?
A:バランスはいいと思いますよ。下位もしぶといですし。

Q:目標をお聞かせ下さい。
A:春に負けた商大を破ってベスト8に入りたいですね。

 どうもありがとうございました。また、試合の応援にもお邪魔しますね。

主将に聞きました〜3年生が「自立」した野球を
 
 キャプテンはキャッチャーの里村大河くん。昨年もマスクを被ってホームベースを死守していた。

Q:チームとして、大切にしていることは何ですか?
A:「チーム一丸」ということは去年から継続しています。人数が少ないので、3年生が自立して、一人一人が自覚を持って野球をしよう、ということを大切にしています。
 
Q:個人的にはどういった課題を持っていますか?
A:キャッチャーとして、青木・池田の二人をきちんとリードしたいです。

Q:君のキャッチャーとしての持ち味は何になりますか?
A:肩が強い、ということですが、送球のコントロールがまだ甘いので、そこをしっかり修正したいです。

Q:目標は横浜商大に勝つ、ということのようですが、それには何が必要でしょうか?
A:やはり、チーム一丸ということだと思います。商大に当たるまで、初戦から気を抜かずにやりたいです。ミスしたら、商大のようなチームには勝てませんし、状況に応じたことを全選手がやらなければならないと思います。

Q:最後の質問です。鶴嶺高校野球部に入ったら、何が得られると思いますか?読者には中学生やその親もいますから、是非、アピールをお願いします。
A:入っただけでは何が得られるかはわからないのですが、考えて野球をやることで、ここ一番での強さが身につく部活だと思います。

 どうもありがとうございました。試合では強肩ぶりを楽しみにしていますね。


2年生マネの桝田千裕さん
マネージャーに聞きました
 
 現在、マネージャーは2名。そのうち、2年生の桝田千裕さんが、我々がグラウンドに入ると同時に疾風の如く駆け寄ってくれました。
(これは鶴嶺野球部員に共通して言えることであるが、「礼儀」というものが凄くしっかりしている。このことだけでも、入る価値はあるように思える。)

 言葉もしっかりしていて驚かされたが、中学時代は放送部に所属していたそうだ。なるほど。きっと、彼女は部員自慢のマネージャーだと見ました。

Q:なぜ野球部のマネージャーになろうと思ったの?
A:野球が好き、というのは勿論なんですが、部がしっかりしていて、自分の考えと合っていると思ったからです。

Q:野球との出会いは何だったのでしょうか?
A:実は中学時代、放送部に入っていて、市内の中学の野球大会を市営球場で場内アナウンスをした経験があるんですね。そういったことで、野球とは縁があるのかと思います。

Q:先ほど、「自分の考えと合っている」という話が出たけど、具体的にはどういうことでしょうか?
A:将来は幼稚園の先生になるのが夢なのですが、子供を見る時に、様々な視点を持つということが大切だと思うんです。そうした、様々な視点、というのが鶴嶺野球部にはありますね。

Q:なるほど、しっかりした考えですね。ところで、マネージャーとしての達成感といったものは、どういう時に感じられますか?
A:自分で考え、行動したことが、結果的に部員のためになる、ということを実感できる時です。考えた上で行動することで、自分も成長できます。考えなく行動すると、部員との間に溝ができたりするので、気をつけています。

 これまで何人ものマネージャーにインタビューさせてもらいましたが、彼女ほど決然たる思いを語ってくれた人はいませんでした。しかも、まだ2年生。こりゃ、来年も安心ですな。

ちょっと悲しいお知らせ
 
 昨夏、3回戦で鶴嶺を葬り去った城郷高校のエース・吉田幸央投手。鶴嶺野球部ファンならずとも、その快速球は記憶に新しいことだろう。

 時速147キロという類まれな才能で、ヤクルトからドラフト5巡目に指名され、入団したのだが、2月のキャンプ中、内臓疾患により、リタイア。その後は自宅療養を続けていたが、回復の目処が立たないことから、6月、任意引退を申し出た。
(記事内容は「週間ベースボール」6/28号による)

 まだ若い。十分に療養して、野球がまた出来るといいけど。野球が出来ないとしても、野球で得た精神力(まさしく菊地原先生の言葉通り)で何とか道を切り開いて欲しい。

 この記事を読んだ、心ある人。彼の復活を一緒に願って下さい。

=2004年度 茅ヶ崎市内各高校野球部顧問の先生方への共通質問=
 
(1)現チームの力を以下の4項目で自己評価(5段階)して下さい。
 ◇投手力:5  ◇守備力:4  ◇打撃力:4  ◇機動力:4

(2)チームとしての課題があるとすればどこでしょうか。
 投手陣(バッテリー)を中心とした、ベスト8以上で通用する守備力、状況判断を備えた攻撃力。
 選手一人一人、高い意識を持って野球に取り組む姿勢。


(3)鍵を握る選手がいれば教えて下さい。特にどういった点で期待しているかも、教えて頂ければ幸いです。
 チームの柱として、エース青木、捕手・里村のバッテリー、守備の中村、打の近藤が中心ですが、サードの山口(3年)、ファースト椎森(3年)の成長と、外野手植田(2年)・渡部(2年)・高木(2年)の経験も勝ち進むために必要条件です。

(4)選手権予選での目標を教えて下さい。
 ※「ベスト8」など戦績的なことに加えて、チームとして、是非これだけはやり遂げたいとお考えになっていることでも結構です。
 幾度となる挑戦、目指すは準々決勝進出(ベスト8達成)。
 数年来(2000年以降)の目標を具体的に取り組んで活動してきました。今年は新チーム結成以来、この目標を常に着眼、意識してきたので、是非、達成・実現させてあげたいと思っています。

(5)「部訓」(またはそれに相当するもの)があれば、教えて下さい。
 ※先生が大切にされている言葉でも結構です。
 意識が変われば行動が変わる。
 逆境は励まし!


(6)これまで高校野球に携わってきて、最も嬉しかったことは何ですか。
 ※高校野球の魅力、ということでも結構です。
 スポーツの中で野球という種目を通して、何事にも全力で取り組み、自分自身を磨き、信じる力を身につけたこと。つまり、選手達が自信を持つことが出来た時に最も嬉しく思います。そして、更に躍進し、活躍する姿を見た時です。
 自分自身にとっては、素晴らしい生徒と出逢えたことが最大の財産です。


(7)野球を通じて、生徒たちに最も伝えたいことは何ですか。
 何事にも前向きに取り組めば、必ず成果が出るという自信を持って欲しい。野球を通して、様々なことを経験し、人に対して感謝の意を持つこと。

(8)練習環境等の整った私立高校に対するライバル意識のようなものはありますか。
 特にありません。二本柱である部活動と学習活動の両面に結果を、成果を出せるチームを目標としています。

(9)先生自身が目標とされている野球人がいらっしゃれば、教えて下さい。特に、その人のどこに惹かれますか。
 ※プロ・アマ、国籍、有名・無名は問いません。
 常葉橘高校(静岡)・小林監督 素晴らしい人間形成を実践されています
 静岡県立掛川西高校・増田監督 全国大会レベルのチーム作りと勉学との両立


(10)全国大会はどうしても「甲子園」で行う必要があるとお考えですか。
 移りゆく時代と共に価値観も変動してゆく中、学生野球の頂点を目指す「甲子園」「神宮」は、全国大会で優勝を決めるだけではない価値、憧れがあるのではないかと、最近、思います。「国立」(サッカー)「花園」(ラグビー)出場も同じことかも知れませんね。

(11)勉強との両立で配慮されていることはありますか。
 野球で培った集中力を勉強に生かす。勉強で培った集中力(精神力)を野球に生かして欲しいです。

(12)野球をやっている中学生に対して、何かメッセージをお願いします。
 高い目標を設定することで、高い意識を持つことが出来ます。意識が変われば行動が変わる。そして、行動が変われば結果も変わる。自分の可能性を最大限に生かして下さい。
 
回答は、監督の菊地原孝祐先生です

 
◆部員数:40名 ◆マネージャー:5名 ◆監督:松島勝司先生 ◆部長:小林豊先生
◆キャプテン:中村将人くん ◆現チームの成績:44勝11敗2分[6月19日現在]
◆これまでの最高成績:ベスト16 ◆昨年の成績:2回戦敗退
◆初戦の日程:7/11(日)相原高校 13:30〜伊勢原球場

 
=昨夏代表の横浜商大打倒を目指せ=
 
 この日のメインメニューは「アメリカンノック」である。ベンチの中にホワイトボードが置いてあり、練習スケジュールが書き出されているので、一見してわかる。
(居酒屋のようだ、と言って納得する高校生は要注意です)

 アメリカン、と言えば、普通「薄い」ということの代名詞。ところが、このアメリカンノックは泣きたくなるほど「濃い」。

 何せ、ボールを取るまでに走る走る。

 私(管理人)は高校時代、陸上部に所属していたにも関わらず、「走る」という行為が実は好きではなかった。
(でも、顧問の先生や他の部員たちには内緒だったけどね)

 で、ある日の練習が「300メートル10本」などと告げられると、たいていはその場で帰宅したくなったものだ。その辛さを知らない人は

 「300メートル10本ったって、合計たかが3キロしか走らねぇじゃんか」

 などと言ってみたりする。

 いやいや、あ〜た、これはほとんど拷問ですぜ。

 300メートルというのは、人間(少なくとも「私」)にとっては、全力疾走できる最大限の距離であり、走り終わると「ケツ割れ」という症状(お尻の筋肉が硬直し、痛くて立っていられない)が起こる。それを10回やれ、と言われれば、人間(少なくとも「私」)せつなくなるものである。

 そんな25年も前の記憶がフラッシュバックする光景であった。
(でも、それで青春の甘酸っぱさを少しだけ懐古できて、ちょっぴり幸せでした)
 
 北陵野球部のアメリカンノックも、目標があるから出来ることであろう。今年から赴任された松島先生も「今は量をこなす時期。ノックでも走る距離を増やしますし、持久走もかなり取り入れています。」とのこと。

 野球で勝つためには、野球だけやっていればいいというものでもない。様々なパーツがあって、それを仕上げた時に、はじめて完成度の高い野球ができるわけだ。

 選手たちも、試合の時に「あれだけ走った。あれだけ練習して負けるはずはない。」と自信を持って臨むためには、それだけの裏づけが必要だ。頭で理解するだけでは足りない。体に染み着いてこそ「力」になりえる。
(でも、勿論、私にはできませんよ。)

 さて、夏の大会へ向け、彼らには期するところがあるようだ。

 というのも、前監督である鶴岡先生が指揮する最後の試合となった春季大会の湘南地区予選で、思いがけず、敗退してしまったからである。「県大会へは出て当然」という思いが彼らにもあったろうが、それが硬さへと繋がったのかもしれない。また、野球は、力があるチームが必ずしも勝つ、というスポーツでもない。
(だから、力をつけなくてもよい、ということではけしてない)

 悔しい思いは胸に残る。そして、それを昇華させるべき夏。組合せも発表され(詳しくはこちら)、順当にいけば4回戦で昨夏の代表校である横浜商大と当たる。勿論、そこへ至る1〜3回戦を突破してこそ、なわけだが、彼らはさらに商大に勝って、5回戦で近隣のライバルで、今夏第3シードとなった鶴嶺と戦うことを望んでいる。

 もし、5回戦で「北陵−鶴嶺」の対戦が実現したら、私もどれほど嬉しいことか。

 頑張れ、北陵野球部!

  
これから恐ろしいノックが始まる、という嵐の前の静けさの図。私なら既にここで耐え切れないと見た。
  
  
休む間もなくノックは続く。カゴに入ったボールはマネージャーからノッカーへと次々に渡され、見る見るカラになってゆく。
           

松島監督にインタビューしました
 
 市内5校では、唯一顧問が替わった北陵。新監督の松島勝司先生は49歳。群馬の大田高校(在学時、関東大会に出場)を経て、順天堂大学へ。これまで座間高校などの顧問を歴任されてきた。

 指導者によって、チームカラーも変わるのは当たり前であるが、今後、北陵野球部がどのように運営されてゆくのか、といったことの他、いろいろとお尋ねしてみた。
 
Q:先生が教師になった際の目的に、野球指導というのはありましたか?
A:もう正直言って、それが一番でしたね。教員採用試験の面接でも、そのことを言ったくらいです。

Q:北陵に赴任されて、野球部に対してどのような印象を受けられましたか?
A:ひと目見て、「可能性のあるチーム」だと思いました。技術・体力のバランスもよく、伸びる余地がありますから。今年の選手たちはポテンシャルもありますよ。2日間練習を見れば、選手たちの能力はおおよそわかりますからね。

Q:別段、強い選手を集めているわけではない公立高校で、「甲子園」というのは、どういった感覚で捉えられていますか?
A:レクリエーションでなく、真剣に目指すべき場所ですね。神奈川県では、以前よりも「強豪私立」の数が増えて、有力選手が分散する傾向にありますので、却ってチャンスが増えたようにも思います。勿論、憧れでもありますが。

Q:現在、練習で工夫されている点は何ですか?
A:与えられた環境の中でいかに工夫して効率よく練習するか、ということです。寒川グラウンドを使わせてもらったり、バッティング練習を朝やる、など、他の部活と協力しながら、やれることはたくさんあります。

Q:7月11日が初戦となりますが、そこに向けて、チームは現在どういった状況にありますか?
A:今はとにかく「量」をこなすべき時期ですので、走る距離の長いノック、いわゆる「アメリカンノック」というやつですね、これや持久走を多く取り入れています。で、来週からは「キレ」を作る期間と位置づけていますので、より実戦に即したものを取り入れてゆくことになります。

Q:現キャプテンの中村くんとエースの東くんについて、先生から見た評価をお願いできますか?
A:中村は統率力がありますね。野球選手としての総合的な力がバランスよく、キャプテンとしての資質は十分です。東は投手陣の中では一歩抜きん出た存在になりましたね。制球力・球種・駆け引きといった面での安定感があります。変化球も、カーブ・スライダーの他にツーシームもありますし、何よりコントロールがよくなって、やらなくてもいいフォアボールがなくなりましたね。

Q:ベンチ入りできない3年生がいる場合に、何か特別に声を掛ける、といったことはなさいますか?
A:幸いにも、今まで3年生がベンチに入れなかったことがないので(今年の北陵は3年生全員がベンチ入り)、特に考えたことがありませんが、以前は部員全員で投票して、ベンチメンバーを決めたこともありますよ。

Q:間近に迫った「鶴北戦」はどういった位置づけになりますか?
A:私は今年赴任してきたばかりなので、わからないところもありますが、夏に向けての力試しの一戦、ということになりますかね。コンディションがよくない中で、どこまでやれるのか、を見ようと思います。

Q:どうもありがとうございました。鶴北戦、さらには夏の大会に向けて、頑張って下さい。

=キャプテン、エース、新入部員、マネージャーに聞きました=
 

好青年の中村将人主将
 
 キャプテンの中村将人くんはキャッチャー。昨年のキャプテンがやはりキャッチャーの高山くんだったので、なかなか公式試合での出場機会に恵まれなかった(いつの時代も第二捕手はそういう運命だ)が、その前キャプテンを尊敬し、追いつけるように努力している、とのこと。

 現コーチでもある一昨年のキャプテン・佐藤くんによると「礼儀がしっかりしていて、不器用なんだけど統率力がある。2年生と3年生の気持ちのギャップを埋めている」という評価だ。
 
Q:キャプテンとして心掛けていることは?
A:3年生が精神的支柱になれるよう、2年生たちがついてきてくれるように、ということですね。学年の溝を埋めることが大事だと思います。

Q:試合の中ではどういったことに心配りをしていますか?
A:集中力を切らさないことです。エラーが出たあとに、声を掛け合って、引きずらないようにしたいです。

Q:今年のチームはどういった特徴がありますか?
A:打撃と内野守備はまずまずだと思います。エースの東も、春に負けてから、キレとコントロールがよくなりましたね。

Q:監督が松島先生に変わって、昨年と違うところはどこになりますか?
A:松島先生はコンディショニングを重視される、ということと、春までとは打順が変わって、つながりも出たように思います。

Q:ズバリ、目標は?
A:ベスト8に入ることです。4回戦で当たる横浜商大はかなり意識はしています。

 どうもありがとうございました。出来る限り、応援に行きますので、少なくとも商大戦までは勝ち上がって下さいね。
 

 背番号1のエース・東遼太郎くんは、1年次からベンチ入りしていただけに、その潜在能力は高いものがあるのだが、2年生の時は少し伸び悩んでいたらしい。それが、松島先生のふとしたアドバイスから、格段に投球内容がよくなったそうだ。そのあたりについても聞いてみた。

Q:どんなアドバイスだったのかな?
A:メジャーリーグのある投手のビデオを見せてもらって、「長身を生かして、上から素直に投げ下ろす」ということを薦められました。

エース東遼太郎くんは足がデカイ
 
Q:かなり効果的だった?
A:はい。制球力がかなりよくなった、ということで、悪いなりにもまとめられるようになりました。ボールのキレもよくなったと思います。

Q:ズバリ、目標は?
A:チームとして、というより個人的には、ということで、言っちゃっていいですか?

 てっぺんです!(力強く)

 でも、まずは一戦一戦勝たなければなりませんから、それは大事にしたいです。4回戦で横浜商大と当たるので、それを意識して練習しています。

Q:明後日の鶴北戦については?
A:商大に勝てば5回戦の相手かもしれませんし、相手はシード校なので燃えますね。出来る限りゼロに抑えたいと思っています。

 どうもありがとうございました。
(編集注 彼はその言葉通り、鶴北戦で6回を投げ、無失点に抑えました。「有言実行」が夏の大会も続くことを切望しています)
 

“小さな大投手”に成れるか?
 
 1年生部員・岡本創くんは平塚の浜岳中学出身。写真を見て頂くとわかるが、身長170センチの私と並んでも、彼の方が小さく、上背はない。

 彼にインタビューした最大の理由は、彼のご両親が私と高校時代の同期生である、ということだが、北陵高校を進学先として選ぶのに、『部活.ネット』が寄与した、という経緯もあった。
 
 最終的に北陵を選んだのは「文武両道」が可能である、というところのようだ。浜岳中学からは彼の他にも5人、北陵に入学しているそうだが、やはり、皆、勉強だけでなく、部活のことも考慮しての進路決定だったと聞いている。

 さて、実際のところ、高校生活はどんなものであろうか。

 「練習は、今のところは死ぬほど辛い、ということはないです。ただ、声の出し方、声掛けのタイミングとかは中学時代とはだいぶ違いますね。とりあえず、今は部活中心の生活になっています。」

 ということだが、ご両親にこっそり聞いたところでは、朝5:50出発、夜9時帰宅、という恐ろしい毎日を過ごしているとのことである。
(ま、勿論、彼だけでなく、他の1年生もほぼ同じようなものなのだが)

 目指すは、新チームになった時のベンチ入り。カーブ、スライダーを駆使する技巧派、岡本創くん。小さな大投手、と言えば陳腐かもしれないが、目標の実現に向けて、頑張って欲しいものだ。『部活.ネット』も応援してますよ。

マネージャーは母の如く?


左)上久保あゆみさん(2年)
右)丸山結さん(3年)

 北陵野球部には5人のマネージャーがいる。

 と言うと、ちょっと羨ましかったりするのだが、私の知る限り、3月まではゼロ名だったはず。廊下にも「野球部マネージャー募集」という貼り紙が至る所にあった記憶がある。
 
 現2年の上久保あゆみさん、現3年の丸山結(ゆい)さんの二人は、他の部活からの転進組である。二人とも、この3月頃からマネージャーとなった。

 「なぜ野球部のマネージャーをやろうと思ったの?」という問いに

 「部員に友達がいて、誘われました。やり始めてからは毎日が楽しみです。」(丸山さん)
 「自分の居場所、自分の存在を求められるところが欲しかった。それに、先輩・後輩といった絆も欲しかったですね。マネージャーになってから、野球も大好きになりました。」(上久保さん)

 とのこと。他に1年生が3人入部して、どうやらマネージャー枯渇という最大の危機は免れたようだ。

Q:マネージャーとしての最大の仕事って何だろう?
A:練習がスムーズに進行するように、先を読んで行動することですね。(二人)

Q:マネージャーは自らプレーすることが出来ませんが、どういった時に達成感がありますか?
A:練習でやってきたことを選手が試合で出してくれた時ですね。(丸山さん)

Q:辛いことはない?昨年のマネージャーは「自分の時間がない」と語っていましたが...
A:苦になるほど時間がない、ということは、今のところはありません。(二人)
(まだ、恐怖の「夏」を体験していませんからね。これから大変かも...)

Q:試合を見ていて何を感じますか?
A:普段とは違う顔だなぁ、と。(丸山さん)
  プレッシャーの中で頑張る選手たちの真剣な顔を見ていると、母親のような気持ちになりますね。(上久保さん)


Q:では、夏の大会に向けて、選手たちへのメッセージを。
A:チームで1つになって、悔いの残らないようにして欲しいです。(二人)

 どうもありがとうございました。マネージャーどうしがとても仲のよい北陵野球部。恐怖の夏を乗り切って、頑張って下さい。また、取材に伺いますね。
 

=2004年度 茅ヶ崎市内各高校野球部顧問の先生方への共通質問=
 
(1)現チームの力を以下の4項目で自己評価(5段階)して下さい。
 ◇投手力:4  ◇守備力:4  ◇打撃力:4  ◇機動力:3

(2)チームとしての課題があるとすればどこでしょうか。
 積極的な走塁、投手層を厚くすること、状況に応じた打撃

(3)鍵を握る選手がいれば教えて下さい。特にどういった点で期待しているかも、教えて頂ければ幸いです。
 2年小澤くん
 6月の練習試合にて肉離れを起こし、現在リハビリ中。二番打者でセンターを守っている。重要な役割を担っているので、完全な状態で間に合って欲しい。


(4)選手権予選での目標を教えて下さい。
 ※「ベスト8」など戦績的なことに加えて、チームとして、是非これだけはやり遂げたいとお考えになっていることでも結構です。
 とにかく、一戦一戦、コンディションを考え、ベストな状態で臨みたい。

(5)「部訓」(またはそれに相当するもの)があれば、教えて下さい。
 ※先生が大切にされている言葉でも結構です。
 明るく、楽しく。愛される野球部になって欲しい。

(6)これまで高校野球に携わってきて、最も嬉しかったことは何ですか。
 ※高校野球の魅力、ということでも結構です。
 選手の心からの笑顔

(7)野球を通じて、生徒たちに最も伝えたいことは何ですか。
 前向きな姿勢と思いやり

(8)練習環境等の整った私立高校に対するライバル意識のようなものはありますか。
 特にない。少しでも工夫し、環境を最大限に生かしたい。

(9)先生自身が目標とされている野球人がいらっしゃれば、教えて下さい。特に、その人のどこに惹かれますか。
 ※プロ・アマ、国籍、有名・無名は問いません。
 蔦先生(元池田高校監督)

(10)全国大会はどうしても「甲子園」で行う必要があるとお考えですか。
 「夢=甲子園」というイメージはありますね!

(11)勉強との両立で配慮されていることはありますか。
 効率よく練習を行い、時間を短縮する 。

(12)野球をやっている中学生に対して、何かメッセージをお願いします。
 とにかく、楽しく!
回答は、監督の松島勝司先生です